ネイティブには通じない!見直すべき英文NGポイント3つ
日本の翻訳業界において圧倒的な割合を占める和文英訳。最近は非ネイティブによる翻訳も多く出回っています。そこで今回は、英語ネイティブが「惜しい!」と感じる英文の特徴と、添削のコツをまとめてみました。意味は通じるけどあと一歩…な英文を、自然でこなれた表現にするには、どのような点に気をつければよいのでしょう? 自分で英作文をする際にも、依頼した翻訳の検収作業にも役立つ、ネイティブ翻訳者直伝の3つのポイントをご紹介します。
ポイント① カタカナ語(和製英語)に要注意
カタカナ語、和製英語と呼ばれる日本で造られた言葉は、英語ネイティブには通じません。「ベビーカー(英:stroller)」のようにそもそも英語に存在しない表現は判別しやすいのですが、英語が日本語独自の解釈で使用されている場合は特に注意が必要です。
印鑑は、日本人が身元確認や承認を行うのに欠かせないツールです。
× A personal seal is an essential tool for Japanese people to identify and certify.
〇 A personal seal is an essential item for Japanese people to identify and certify.
この tool という言葉は元々、機械建築分野で使う「工具」という意味から派生して、ある職業に必要な器具、役に立つ道具という意味でも用いられるようになりました。つまり外科医の「メス」はtoolと言えます。一方、日本語の「ツール」は「何かをするための手段」という、より広い意味でも使われます。
この例文の「personal seal(印鑑)=tool」もネイティブ的にはNG(※NGも英語では通じない和製英語です!)なので、itemなどに置き換えるとよいでしょう。
ほかにも、一見英語のようで、実は英語と違う意味を持つ単語には次のようなものがあります。
和製英語 | 日本語の意味 | 英語の意味 | 正しい英単語 |
---|---|---|---|
マンション / mansion | 集合住宅 | 豪邸 | apartment または condominium |
クレーム / claim | 苦情 | 要求、主張 | complain |
セレブリティ / celebrity | (有名人) / 金持ち | 有名人 | the rich |
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ポイント② 動詞を有効活用しましょう
間違いではないけれど、何となく違和感がある…とネイティブが感じる英文、いわゆる「翻訳調」な英文には、日本語の文章構造の「名残」が見られます。その一つが、動詞の使い方です。
政府はその事件の調査を行うべきだ。
△ The government should conduct an investigation on the accident.
〇 The government should investigate the accident.
日本語原文が「調査すべきだ」と書かれていれば良いのですが、「調査を行うべきだ」と書かれると、どうしても上の英文のように「調査(investigation)+行う(conduct)」と訳してしまいがちです。日本語は名詞を多用する言語ですが、それをそのまま翻訳すると冗長になります。英語では動詞を効果的に使って、なるべく少ない言葉で表現するよう心掛けましょう。
ほかにも、動詞1語で表せる「動詞+名詞」の組み合わせには次のようなものがあります。
日本語 | 英語(動詞+名詞) | 英語(動詞1語) |
---|---|---|
生徒に助言を与える | give advice to the student | advise the student |
用紙に必要事項を記入する | fill in the necessary items in the form | complete the form |
検査の結果、ガンが発見された | As a result of the test, the cancer was found | The test revealed the cancer |
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ポイント③ 受動態を能動態に変えてみましょう
「翻訳調」を解消するもう一つのコツは、なるべく受動態(passive voice)を避け、能動態(active voice)にしてみることです。
2019年のラグビーワールドカップや2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会など、いくつもの大きなイベントが日本で開催される予定です。
△ Several major events, including the Rugby World Cup 2019 and the 2020 Tokyo Olympics and Paralympics, are planned to be held in Japan.
〇 Japan will be hosting several major events, including the Rugby World Cup 2019 and the 2020 Tokyo Olympics and Paralympics.
能動態で書かれた下の文章のほうが、はるかに読みやすくなりました。これは、文章が短くなったからだけではなく、「日本で開催される」という文章の核となる部分を冒頭に持ってきたおかげでもあります。一般的に、日本語では重要な情報が文章の後ろに来るのに対して、英語では重要な情報が前に来る、と覚えておくとよいでしょう。
<情報の重要度>
①日本で開催される予定だ(日本が主催する予定だ) … 主部+述部
②いくつもの大きなイベントが(を) … 目的語
③2019年のラグビーワールドカップや2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会など … 修飾部(例示)
おわりに
いかがでしたでしょうか。「文章の良し悪し」は感覚的な要素も大きく、なかなか言語化が難しいテーマではありますが、「文章の読みやすさ」には言語ごとに一定のセオリーがあります。今回は英語ネイティブの視点で、翻訳に役立つ3つのポイントをお伝えしました。ぜひ翻訳の発注・検収時の参考にしてみてください。